‍筋トレvs有酸素運動⑥

2-1.有酸素運動がダイエットや若返りに効果的な3つの理由

ランニングなどの有酸素運動による身体へのよい影響は、心肺機能の向上や全身の血行改善、カロリー消費によるダイエット効果のイメージが強いのではないでしょうか。しかし、無酸素運動と同じく、有酸素運動には有酸素運動でしか得られない若返り効果があるのです。

では、有酸素運動による若返り効果を期待できる理由はどこにあるのしょうか?

筋トレなどの無酸素運動では補酵素やホルモン量の増加が大きなポイントであるのに対して、無酸素運動のカギは、細胞や遺伝子の活性化にあります。

 

キーポイントとなるのは、細胞分裂の回数に関わる『テロメア』、脳の若さを左右する『神経幹細胞』、そしてエネルギーの製造源である『ミトコンドリア』の3つ。これらを有酸素運動によって増やしたり、活性化させることで、さまざまな若返り効果が得られるのです。

 

 

2-2.寿命と見た目年齢を左右!『テロメア』の伸長

テロメア』は、私たちの身体を作っているDNAの末端部分の総称です。テロメアは、身体の細胞が分裂して増えるたびに短くなっていくことから「寿命の回数券」と呼ばれています。つまり、テロメアが長い状態を保てているほど、寿命も長くなると考えられています。

 

 

さらに、テロメアは寿命の長さだけでなく、見た目年齢にも大きく影響することが分かっています。

見た目年齢が若い人のテロメアを調べた結果、長いテロメアが多く、短いテロメアは少ない傾向にあったそうです。

では実際、有酸素運動はどれくらいテロメアの伸長に効果的なのでしょうか?

若い頃から継続的な運動習慣がある方とそうでない方を比較すると、前者のほうがテロメアが長い傾向にあることが分かっています。一例として、週5日、25〜40分のランニングを行っている人は、実年齢よりも9歳も若い長さのテロメアに発達していたということがあります。

この例を見てしまうと、そこまで高頻度で継続的に有酸素運動をおこなうのは難しいと感じるかもしれません。

しかし、テロメアの長さは、運動習慣だけでなく日頃の生活スタイルも大きく影響するのです。

例えば、1日のなかで座っりっぱなしでいる時間が短い人がほど、保持しているテロメアが長いということが判明しています。〇分歩く、〇km走るといった運動ができなくても大丈夫。デスクワークでも、立ち上がる、少し歩くという風に、“なるべく座っている時間を減らして活動量を増やす”といった、簡単なことからでかまいません。将来のテロメアの長さは、今からできる小さな習慣の積み重ねでかわります。

日頃の運動や活動がしっかりと習慣化していればいるほど、長生きと若見えの両方にとても重要なのです。

 

 

2-3.認知機能に直結!『神経幹細胞』の増加

歳を重ねてもキレのある頭のはたらきをキープする方法として、脳トレなどで頭を鍛えることを想像する方もいるのではないでしょうか。

しかし、実は、運動で身体を使うことも、脳の若さを保つ方法として効果的なのです。

脳の若さのカギを握る『神経幹細胞』は、加齢や飲酒などによって減少してしまいます。また、脳の神経幹細胞は、脳内で学習や記憶の分野を担う『海馬』で作られているため、その生成量が認知機能にダイレクトに影響します。そのため、神経幹細胞が減少することで認知機能が衰え、物忘れが増えたり、物覚えが悪くなったり、ひどい場合は認知症の発症にいたるのです。

 

 

しかし、運動習慣があれば、その認知機能低下に歯止めをきかせることができます。特に、有酸素運動は海馬の活性化につながり、結果的に新しくつくり出す神経幹細胞の数を増やすことができるのです。この有酸素運動はとてもやさしいものです。ゆっくりとしたペースでのウォーキングを、たったの10分おこなうだけでもその効果があるとされています。また、ダイエットのために運動をしてもボディラインが変化するには数ヶ月かかりますが、認知機能は2週間ほどの運動でも改善が見られるのが特徴です。

さらに、話しながら身体を動かすことで、脳の認知機能がアップすることが分かっています。家族や友人とともに、楽しく会話をしながらの運動ならば、身体的だけでなく、精神的な健康にもつながります。

 

 

もうひとつ知っておきたいのは、高齢者では身体の持久力が高いほど、脳の認知機能も高いということ。軽い運動でも充分効果はありますが、若々しい脳を保つためには、可能な限り長く動き続ける運動を取り入れることが大事なポイントです。ダイエットの目的がない場合でも、体力に自信があるならば、少し時間が長めのウォーキングやサイクリング、エアロビクスにチャレンジしてみましょう。 

 

 

2-4.エネルギーを産生!『ミトコンドリア』の増加

ミトコンドリア』は、筋肉の細胞に存在している、活動するために必要なエネルギーを産生している小器官です。そのため、筋肉量が多い人ほどミトコンドリアの量も多く、よりエネルギーを生み出せます。“スタミナ”や“体力”といった感覚的な指標は、このミトコンドリアの量と活性具合のことを指すのです。

 

 

ミトコンドリアは、筋肉のなかでも、速筋よりも遅筋に多いことが分かっています。遅筋は、有酸素運動で使われる筋肉です。つまり、有酸素運動によって遅筋を使うことで、ミトコンドリアの増加と活性化を促せるのです。その結果、エネルギーの産生量が増え、疲れにくく、スタミナのある身体をつくることができます。

 

 

3.筋トレ×有酸素運動で効率アップ『HIIT』

ミトコンドリアを増やすのに有効な有酸素運動ですが、より効果的な裏ワザがあります。

 

それが、有酸素運動無酸素運動をミックスさせたトレーニング『HIIT』です。

 

 

『HIIT』とは、High Intensity Interval Training=高強度インターバルトレーニングの略称です。トレーニングの内容は、息ができないレベルの高強度(High Intensity)の運動と休憩を交互(Interval)に取り入れてトレーニング(Training)するといったもの。この息ができないレベルの運動には、腕立て伏せや、ジャンプ、スクワットといった無酸素運動の要素を含みます。

HIITは、ミトコンドリアの増加や活性化のほか、心肺機能の向上や、高い脂肪燃焼効果といった有酸素運動と筋トレで得られる双方のメリットを享受できます。

 

・一番短い方法で4分間、どんなに長くても30分以内に終わる

・特別な器具を必要としない

・外に出なくても室内で実践が可能

 

上記のように、自宅で短時間で済む点も魅力です。

 

 

とはいえ、HIITは心拍数の上がるキツい運動であることに変わりはありません。しかし、このキツさがミトコンドリアの増加をさらに加速させるために必要なエッセンスなのです。

 

また、上級者編として、運動の種類、運動をおこなう時の“環境”や“体調”にも配慮できるとさらに理想的です。“寒さや空腹”を感じる状態で、大きな筋肉群を使う運動であるほど、細胞にもっとも効率よくストレスを与えることができるからです。

 

 

4.最強の運動条件!空腹×寒さדスクワットを含むHIIT”

結論として、若返りに有効な最強の運動の条件は3つ。

 

①意図的に長時間の空腹時間を設ける『16時間断食』や『ファスティング』を実施する

②“空腹”や“寒さ”を感じる状態のときにおこなう

③“スクワットを含むHIIT”で全身を使った運動にチャレンジする

 

この3つの条件を満たし、空腹×寒さ×スクワットを含むHIITをクリアできるとどうなるか…?

脂肪燃焼による高いダイエット効果を望めることはもちろん、ミトコンドリアの増加のほかにも、細胞の大掃除と生まれ変わりを促すオートファジーまでもが活性化されます。つまり、ダイエットだけでなく、最高の若返り効果をもたらしてくれるのです。

 

ダイエットをしたい方、体調に問題がない方、時間を効率的に使って若返り効果を求めたい方にとって、空腹×寒さ×スクワットを含むHIITは、最高の運動ともいえるでしょう。その際はくれぐれも、無理をせず、低血糖や体調不良に気をつけながらおこなってくださいね。

 

 

まとめ

 

筋トレをはじめとする無酸素運動と、ランニングなどの有酸素運動の、若返り効果と理由をお伝えしました。最後に今回あがったポイントを振り返ってみましょう。

 

■筋トレなどの無酸素運動

 

・キーワード:NAD、成長ホルモン、DHEAの増加

・具体的な若返り効果:低下していたさまざまな代謝がアップし、疲れにくく、太りにくい、健康的なボディラインとメンタルヘルスの維持に有効

 

■ランニングなどの有酸素運動

 

・キーワード:テロメアが延長し、神経幹細胞やミトコンドリアの増加

・具体的な若返り効果:若々しい見た目年齢や認知機能の維持、スタミナの向上に有効

 

■HIIT

 

・キーワード:有酸素運動と筋トレをミックスさせた内容で、双方の効果を得られる

・具体的な若返り効果:ミトコンドリアの増加、心肺機能の向上、脂肪燃焼に有効

 

■最強の若返り運動

 

・結論:空腹×寒さ×スクワットを含むHIITにチャレンジ

 

いかがでしたでしょうか?ダイエットや健康維持のためにおこなわれることが多い運動ですが、いつまでも若々しく、自信のある自分でありたい方にとっても必要不可欠なのです。

大切なのは、負荷が軽くても、時間が短くても、とにかく継続することです! 数年後、数十年後も若々しくあるために、今から運動習慣を身につけていきましょう。